1. 学科の特徴と社会での役割
学問の本質
日本文学・日本語学は、「日本語」という言語そのものと、「日本の文学・物語文化」を研究する学問です。古典文学から現代文学、さらには漫画・アニメといった現代の物語表現まで、そして日本語の文法・音声・語彙といった言語の構造まで、幅広い領域を扱います。
社会で求められる力
この学問で身につく「読解力」「分析力」「表現力」「文章力」は、多様な分野で価値を生み出します。教育、出版、広告、メディア、Web コンテンツ制作、地域文化振興、さらには一般企業の企画・広報業務など、「ことば」を使って価値を創造するあらゆる場面で活躍できます。
2. 何を学ぶのか?
基礎分野
日本文学史
- 上代文学(『古事記』『万葉集』)
- 中古文学(『源氏物語』『枕草子』)
- 中世文学(『平家物語』『方丈記』)
- 近世文学(松尾芭蕉、井原西鶴、上田秋成)
- 近代文学(夏目漱石、樋口一葉、芥川龍之介)
- 現代文学(太宰治、村上春樹、江國香織など)
日本語学
- 音韻論:日本語の音の体系
- 文法論:言葉の構造と規則
- 語彙論:言葉の意味と変化
- 文字・表記論:かな・漢字の歴史
- 方言学:地域による言語の違い
- 社会言語学:場面や世代による言語使用の違い
文学理論・表現技法
- 文章読解と批評の方法
- 表現分析の技法
- クリエイティブライティング(創作)
応用・発展分野
現代文化研究
漫画・アニメ・ゲーム・J-POPなどのポップカルチャーにおける物語構造や表現の分析
言語コーパス分析
大量の文章データベースを用いた言語研究。例えば、国立国語研究所の『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を使った実証的な言語分析
比較文学・比較言語学
日本文学を世界文学の文脈で捉え、異文化との比較を通じて新たな価値を発見する
日本語教育学
日本語を外国語として教えるための理論と実践。日本語教師を目指す学生には必須の分野
実習・フィールドワーク
- 古典資料の翻刻実習:くずし字(変体仮名)を読む訓練
- 方言調査のフィールドワーク:実際に地域に出向き、言語の実態を調査
- 文学館・博物館の見学:現物資料に触れる体験
- 文学作品の分析・プレゼンテーション:少人数ゼミでの発表と議論
3. 大学による特色の違い
早稲田大学 文学部 日本語日本文学コース
- 規模と内容の充実度で日本トップクラス
- 村上春樹、江國香織など現代作家研究も盛ん
- 比較文学的研究、メディア文化研究も重視
國學院大學 文学部 日本文学科
- 皇典講究所の伝統を引き継ぎ、神道文化や古典文学研究に強み
- 日本文学専攻、日本語学専攻、伝承文学専攻の3専攻制
- 民俗学・儀礼研究の独自性
筑波大学 人文・文化学群
- 人文学類 言語学主専攻:日本語学を一般言語学の視点から研究
- 比較文化学類 日本文学コース:比較文学的アプローチ
- 日本語・日本文化学類:グローバルな視点で日本語・日本文化を発信
- データ科学と結びついた言語研究が可能
大阪大学 文学部
- 日本文学・国語学専修:歴史的変遷を重視した文献研究
- 日本語学専修:現代日本語、社会言語学、応用日本語学の3領域
- 実証的研究と理論研究のバランスが特徴
4. この学問に向いている人
興味・関心
- 物語、小説、詩歌、古典文学が好き
- ことばの意味や使い方、表現に興味がある
- 日本文化や日本史に深い関心がある
- 現代のポップカルチャー(漫画・アニメ)を学術的に研究したい
必要な適性
- 長文を読むことが苦にならない
- 自分の考えを論理的にまとめて表現できる
- 細部まで丁寧に観察・分析できる
- 地道な調査や研究を続ける粘り強さ
将来への展望
- 国語科教員や日本語教師になりたい
- 編集者、ライター、コンテンツ企画の仕事に興味がある
- ことばやコミュニケーションで社会に貢献したい
- 日本文化を国内外に発信したい
5. 卒業後の進路
主な就職先
出版・編集・メディア業界
出版社、編集プロダクション、新聞社、雑誌編集、Webメディア
広告・マーケティング業界
コピーライター、広報・PR、コンテンツマーケティング
教育業界
- 中学・高校の国語科教員
- 日本語教師(国内外の日本語学校)
- 学習塾講師
IT・Web業界
Webライター、コンテンツ企画、UXライティング、編集ディレクター
文化・観光分野
地方自治体の文化振興部門、観光企画、ミュージアム、図書館
一般企業
総合職(特に企画、広報、人事、営業など文章力・コミュニケーション力を活かせる部署)
大学院進学・研究職
- 日本文学研究者、日本語学研究者
- 国語辞書編纂、国立国語研究所などの研究機関
- 大学教員、博物館学芸員
取得可能な資格
- 国語科教員免許(中学・高校)
- 日本語教師資格(大学での課程修了、または日本語教育能力検定試験合格)
- 学芸員資格(博物館・美術館で働く資格)
- 司書資格(図書館で働く資格)
- 学校図書館司書教諭(教員免許と合わせて取得)
6. 進学前にチェックしたいポイント
大学選びのチェックリスト
カリキュラムの特色
- 古典文学・近現代文学・日本語学のどの分野に強いか
- ポップカルチャー研究や比較文学の授業があるか
- 言語コーパス分析など最新の研究手法を学べるか
実習・実践の機会
- フィールドワークや文学館見学の機会が豊富か
- 少人数ゼミでの発表・討論の機会はあるか
- くずし字や古典資料に触れる実習があるか
資格取得サポート
- 教員免許取得のための教職課程が充実しているか
- 日本語教師養成課程があるか
- 学芸員・司書課程が設置されているか
研究環境
- 教員の専門分野が自分の興味と合致しているか
- 図書館の蔵書や古典資料が充実しているか
- 大学院進学を視野に入れる場合、大学院の評価は高いか
この学問の社会的意義と将来性
日本文学・日本語学は「人が生きるための言葉」を扱う学問です。AI時代だからこそ、文脈を読み取り、ニュアンスを理解し、心に響く表現を生み出す力を持つ人材の価値は高まっています。
データだけでは伝わらない物語性、文化的背景を踏まえた表現力、論理的かつ説得力のある文章力。これらのスキルは、テクノロジーが進化する社会において、むしろ希少で強力な武器となるでしょう。
まとめ
日本文学・日本語学は、単に古典や文学作品を読むだけでなく、言葉を通じて人間と社会を深く理解する学問です。論理的思考力、分析力、表現力を磨くことで、教育、出版、メディア、IT、一般企業など、幅広い分野で活躍できる力が身につきます。
「言葉」に興味がある、物語が好き、日本文化を深く知りたい――そんな思いがある高校生のみなさんにとって、この学問は人生を豊かにする選択肢の一つになるはずです。
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