職業の概要
絵本作家は、赤ちゃんや幼児を対象としたものから、大人向けのものまで、さまざまな年齢を対象に絵本を制作する専門職です。読み聞かせや学校教育、家庭での読書を通じて、子どもの想像力や感性を育てる重要な役割を担っています。作品は長く読み継がれることも多く、世代を超えて影響を与える職業です。
絵本作家には、絵と文章の両方を手がける作家もいれば、絵のみ、あるいは文章のみを担当する作家もいます。それぞれの得意分野を活かし、時には分業で作品を作り上げることもあります。
仕事内容
絵本作家の仕事は、単に絵を描くだけではなく、企画からデザイン、出版後の活動まで多岐にわたります。
主な仕事内容
- 絵本のテーマ・ストーリーの企画・構成
- キャラクターデザインと世界観の設定
- プロット・絵コンテの作成
- 原画制作(下絵・ペン入れ・彩色)
- 編集者との打ち合わせ・修正対応
- 出版社への作品持ち込み・公募への応募
- 読み聞かせ会・サイン会・講演会への参加
- SNSやWebでの作品プロモーション
絵本制作は作家と編集者が二人三脚で作品を作り上げていくプロセスであり、編集者との円滑なコミュニケーション能力や柔軟性も求められます。
働く場所・雇用形態
絵本作家はフリーランスで活動している人が中心ですが、働き方は多様です。
- フリーランス:自宅やアトリエで創作活動
- デザイン会社・キャラクター制作会社勤務:社員として安定収入を確保しつつ創作活動
- 教育機関・児童施設との連携:ワークショップや講演活動
- イベント会場・図書館:読み聞かせ会やサイン会
- オンライン:デジタル絵本制作・SNSでの作品発表
多くの作家は兼業しているのが実態で、イラストレーターや挿絵、デザイン業務などを並行して行っています。
収入の実態
絵本作家の収入は、出版形態や作品の売れ行きによって大きく変動します。
収入源
基本的に絵本作家の収入源は「原稿料」と「印税」の2つです。
原稿料
印税
年収の目安
フリーランスの場合
- 新人・副業レベル:年収100万円未満
- 絵本の印税の収入だけで生活できている人は、日本中探しても20人といない専業絵本作家(複数収入源あり):年収200万〜400万円
- ベストセラー作家:年収1,000万円以上も可能
会社勤務の場合
- デザイン会社・キャラクター制作会社などに就職した際の初任給は、20万円前後が目安年収300万〜400万円程度
絵本作家だけで生活を成り立たせるのは、ほぼ難しいというのが実状です。多くの人は「本が売れれば印税が入る」程度の理解しかしていませんが、実際の印税システムは非常に複雑 であり、長期的な視点での収入戦略が必要です。
なるための道のり
絵本作家になるために必須の国家資格はありません。必ず絵本作家になれるというような決まった道はありませんが、一般的な流れは以下の通りです。
1. 基礎力を養う
2. デビューの方法
出版社への持ち込み
公募・コンテストへの応募
自費出版・デジタル発信
3. 継続的な活動
- 実績を積み重ね、新作を発表し続ける
- 「絵本作家は、10冊著作を出して、初めて食べていけると言われています
難易度(★と☆で表示)
| 項目 | 難易度 | 説明 |
|---|---|---|
| 大学受験 | ★★☆☆☆ | 美術・文系学部が中心で選択肢は広い。必須ではない |
| 資格・試験 | ☆☆☆☆☆ | 国家資格は不要 |
| デビュー | ★★★★☆ | 公募や持ち込みでの競争率は高い |
| 収入の安定 | ★★★★★ | 絵本のみで生活できる作家は極めて少数 |
| 総合評価 | ★★★★☆ | 継続力と創作力、そして複数の収入源確保が強く求められる |
必要なスキル・適性
絵本作家には、高い作画技術、ストーリーテリングの能力、創造力と独創性、高いコミュニケーション能力が求められます。具体的には以下の通りです。
創作スキル
- 発想力・想像力
- 画力・描画技術・デジタルツールの操作スキル
- 文章構成力・言語センス
- 色彩感覚・デザインセンス
人間的資質
- 子どもの視点を理解する力
- 日常の生活の中に落ちているエピソードに気づける洞察力や観察力
- 粘り強く作品を作り続ける力
- 編集者と円滑に協働できる柔軟性
向いている人・向いていない人
向いている人
- 絵や物語を作ることに情熱を持てる人
- 子ども向け表現に興味がある人
- 評価されなくても描き続けられる、あきらめない決意を持てる人
- コツコツ努力できる人
- 複数の収入源を柔軟に確保できる人
向いていないかも
- 安定収入を最優先したい人
- 短期間での成功を期待する人
- 批判や修正依頼に過度に落ち込む人
- 兼業・副業を受け入れられない人
将来性と市場動向
絵本市場の現状
近年、出版不況と言われ、書籍の売り上げが著しく下がっているが、絵本を含む児童書などの子ども向けの出版物では新たな需要も生まれている。少子化にもかかわらず、小さいうちはスマートフォンやタブレット端末・ゲーム機よりも本を与えたいという親や祖父母世代の意向により、絵本市場は堅調です。
デジタル化の動向
ポプラ社は2015年にデジタル化を始め、これまでに約200作品の「デジタル絵本」を発売している一方で、福音館書店は電子書籍化した児童書の販売を始めたが、絵本のデジタル化には踏み切れないでいる状況です。
紙の絵本には、子どもがより内容に集中できたり、読み手が子どもの理解度にあわせて文章を言い換えたりできるといった利点があるため、紙の絵本への需要は今後も続くと考えられます。
AIと絵本作家の未来
AIが進歩していくことで、絵が描けない人でもストーリーを考えればAIが絵を描いてくれる、またはその逆という状況も十分にありえる可能性がありますが、テクノロジーが発達していくほど絵本のもつ温かみが求められたりもするため、絵本作家が活躍する場面は今後もありそうです。
新たな可能性
- 文字がなく絵から読み取る絵本、子育て世代に寄り添った内容の絵本、ブラックユーモアに富んだ絵本など、大人向けの絵本の需要は今後も拡大していくと考えられています
- 企業の社員教育用絵本、CSR活動としての絵本制作など、ビジネス領域での活用も増加
- 海外展開(翻訳出版)によるグローバル市場での可能性
- 教育・福祉分野との連携強化
人気の作家に注目が集まり仕事も集中する傾向にはありますが、絵本の需要を踏まえ出版社も力を入れるところが増えてきているため、絵本作家として活躍するチャンスはあると言えます。
職業情報まとめ
- 職業名:絵本作家
- 仕事内容:絵と文章で物語を創作し、子どもから大人まで幅広い読者に感動や学びを届ける表現職
- 年収の目安:100万〜400万円(専業の場合。兼業含む)/ ヒット作で大幅増の可能性あり
- 進路:高校 → 美術系学校で学ぶ(または独学)→ 作品制作 → 公募・持ち込み → デビュー → 継続的な作品発表
- 難易度(総合):★★★★☆(4/5)— 継続的な創作活動と複数の収入源確保が必須
引用文献
本記事は以下の情報源を参考に作成されました。
- 絵本の印税システムと収入構造について
- 絵本作家の印税率(8-12%)に関する情報
- 印税システムの複雑さに関する解説
- 絵本作家の収入実態
- 初版部数と印税額の計算例(1000円×1000部×10%=10万円)
- デザイン会社・キャラクター制作会社の初任給(20万円前後)
- 絵本作家だけでの生活の困難さに関する実態
- 絵本作家の生計に関する現実
- 印税収入のみで生活できる作家の人数(約20人)
- 「10冊著作を出して初めて食べていける」という業界の実情
- 働き方と収入源
- フリーランスでの活動が中心という実態
- 原稿料の相場(4,000〜50,000円)
- 兼業の必要性について
- 絵本作家に必要なスキル
- 作画技術、ストーリーテリング能力、創造力、コミュニケーション能力
- デビュー方法と公募について
- 出版社への持ち込みのハードルの高さ
- 公募・コンテスト入選の利点(担当編集者の獲得など)
- 洞察力や観察力の重要性
- 編集者との二人三脚での制作プロセス
- 絵本作家としての心構え
- 評価されなくても描き続ける決意の必要性
- なるための決まった道がないという現実
- 教育・学習について
- 美術系大学・専門学校での教育の推奨
- デジタル絵本やSNSを活用した自己プロモーション方法
- 絵本市場の動向
- デジタル絵本の展開(ポプラ社の約200作品のデジタル化)
- 福音館書店の絵本デジタル化への慎重姿勢
- 紙の絵本の利点(子どもの集中力、読み手の柔軟性)
- AIと絵本作家の共存可能性
- 将来性と市場展望
- 出版不況下での児童書市場の堅調さ
- 親・祖父母世代の紙の本へのニーズ
- 大人向け絵本市場の拡大(文字なし絵本、子育て支援絵本など)
- 人気作家への仕事集中傾向と新人のチャンス
※本記事は2025年12月時点での情報に基づいています。絵本作家を目指す方は、最新の公募情報や市場動向を各出版社の公式サイトや業界団体の情報で確認することをお勧めします。

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