2025年11月9日日曜日

高校教員を目指す人のための学部選択ガイド 教育学部と一般学部、どちらが最適か 【宗樹舎大学学部学科紹介 #40】

重要な前提:「高校教員養成課程」という独立した課程は一般的ではない

高校の先生になりたいと考えている皆さんに、まず知っていただきたい重要な事実があります。

現在の日本の大学には、「高等学校教員養成課程」という独立した専門課程はほとんど存在しません。

教育学部の教員養成課程は、主に小学校教員と中学校教員の養成を目的としています。高等学校教員は、むしろ一般学部(文学部・理学部・法学部・経済学部など)で専門分野を深く学びながら、教職課程を履修して免許を取得するのが一般的なルートです。

過去には、広島大学や金沢大学などに高等学校教員養成課程が設置されていた時期もありましたが、現在ではほとんどがゼロ免課程(教員免許取得を必須としない課程)に転換されています。


1. 高校教員免許を取得する2つの主要ルート

高等学校教諭一種免許状を取得するには、主に以下の2つのルートがあります。

ルート①:教育学部(教員養成系)で取得

特徴

  • 主な目的は小学校・中学校教員の養成
  • 中学校免許と高校免許をセットで取得するのが一般的
  • 教育理論、教育心理学、学習指導法などを体系的に学べる
  • 教育実習や教員採用試験対策のサポートが手厚い

取得できる免許の例

  • 中学校教諭一種免許状(国語/数学/英語/理科/社会など)
  • 高等学校教諭一種免許状(国語/数学/英語/理科/地理歴史/公民など)
  • 特別支援学校教諭免許状(併修可能な場合)

向いている人

  • 中学校教員も視野に入れている
  • 教育について理論的・体系的に学びたい
  • 教員採用試験に向けた手厚いサポートを受けたい

ルート②:一般学部で専門分野を学びながら教職課程を履修

特徴

  • 専門分野を深く学びながら、並行して教職課程を履修
  • 高校教員を目指す場合は、こちらのルートが主流
  • 専門性を活かした授業ができる
  • 教員以外の進路も選択しやすい

学部と取得できる免許の対応例

学部取得できる高校・中学免許(教科)
文学部(国文学専攻)高校国語、中学国語
文学部(英文学専攻)高校英語、中学英語
文学部(史学専攻)高校地理歴史、中学社会
理学部(数学科)高校数学、中学数学、高校情報
理学部(物理・化学・生物学科)高校理科、中学理科
法学部・経済学部高校公民、中学社会
農学部高校理科・高校農業、中学理科
工学部高校工業、高校情報(学科による)

向いている人

  • 特定の教科に強い関心があり、専門性を深めたい
  • 高校教員を第一志望とする
  • 教員以外のキャリアも視野に入れている

2. 教育学部と一般学部の違い

カリキュラムの違い

教育学部(教員養成系)

  • 教職科目が卒業要件に組み込まれている
  • 教育原理、教育心理学、教育史、教育法規など教育学の基礎を必修として学ぶ
  • 各教科の指導法を体系的に学ぶ
  • 教育実習は必修(中学校3週間以上、高校2週間以上)
  • 卒業と同時に教員免許を取得できるカリキュラム

一般学部+教職課程

  • 学部の専門科目が中心
  • 教職科目は選択履修(追加で単位を取得する必要がある)
  • 専門分野を深く学べる
  • 教育実習は教職課程履修者のみ
  • 卒業要件の単位に加えて、教職課程の単位取得が必要(負担は大きい)

教育実習について

高等学校教員免許取得のための教育実習は2週間(最低10日間)が基本です。中学校免許も同時に取得する場合は3週間(最低15日間)以上の実習が必要になります。

実習時期は4年次の5〜6月が一般的ですが、9月以降に実施する場合もあり、実習校の都合によって異なります。

実習先は原則として出身校(母校)で行うのが基本ですが、教育委員会が配当する場合もあります。

教員採用試験対策

教育学部のメリット

  • 教員採用試験対策講座が充実
  • 教職専門の教員による指導
  • 同じ目標を持つ仲間が多い
  • 教育実習の経験を共有しやすい

一般学部の状況

  • 教職課程センターなどでサポートはあるが、教育学部ほど手厚くない場合が多い
  • 自主的な学習が求められる
  • 専門教科の知識は深い

3. 高校教員を目指す場合の学部選択のポイント

専門教科による選択の違い

国語・英語を教えたい場合 → 文学部(国文学・英文学)が主流

  • 文学作品の深い理解と分析力
  • 言語学、文学史などの専門知識
  • 教育学部でも取得可能だが、専門性では文学部に劣る

数学・理科を教えたい場合 → 理学部・工学部・農学部が主流

  • 高度な数学的思考力、科学的探究力
  • 最新の研究動向に触れられる
  • 教育学部でも取得可能だが、専門研究の深さでは理学部に劣る

社会(地理歴史・公民)を教えたい場合 → 文学部(史学)・法学部・経済学部

  • 歴史研究、法学、経済学などの専門知識
  • 社会科学的な思考力
  • 教育学部でも取得可能

4. 教員採用試験の現状

最新の倍率データ

令和2年度から令和6年度までの教員採用試験の全国平均倍率は3.2倍〜4.0倍で推移しています。2024年度の公立学校教員採用選考試験の競争率は過去最低の3.2倍となり、前年度の3.4倍から低下しました。

校種別の倍率

  • 小学校の競争率は2.2倍
  • 中学校の競争率は4.0倍
  • 高等学校の競争率は4.3倍

一般的に、小学校は3〜4倍程度、中学校・高等学校は6〜7倍程度となっていますが、中学校・高等学校の場合、教科によっても状況が異なります。自治体によっては20倍近くになる校種教科もあり、熾烈な競争になっています。

倍率低下の背景 第二次ベビーブーム世代(1971年〜1974年生まれ)の教員が大量退職の時期を迎えており、その補充のために各自治体が合格者数を増やしている一方で、受験者数は減少傾向にあります。

試験の難易度について

教員採用試験は、日程の前倒しが進んでおり、2024年は5月から9月にかけて自治体ごとに実施されます。多くの場合、1次試験と2次試験の2段階に分けて試験が実施され、1次試験は5〜7月、2次試験は6〜9月となっています。

倍率が下がっているとはいえ、合格者全体の約半数は教職経験者で、採用直前の職として国公私立の教員(非常勤講師も含む)であるというデータを踏まえても、受験生のレベルが高いため、十分な準備が必要です。


5. 将来の進路とキャリア

主な就職先

公立高校

  • 都道府県教育委員会の教員採用試験に合格
  • 公務員として安定した雇用

私立高校

  • 各学校の独自採用
  • 学校ごとに特色ある教育

その他の進路

  • 学習塾・予備校講師
  • 教育関連企業(教材会社、EdTech企業)
  • 一般企業の人材育成部門
  • 教育委員会・教育行政
  • 大学院進学→研究者・大学教員

教員以外の進路について

教育学部卒業生

  • 教員になる人が多数派
  • 一般企業就職の際、「なぜ教員にならなかったのか」と問われることがある
  • 教育関連企業への就職は有利

一般学部卒業生

  • 教員免許を持ちながら、専門分野を活かして一般企業に就職する選択肢も広い
  • 学部の専門性を活かしたキャリアが選びやすい

6. 学部選択のチェックポイント

項目教育学部一般学部 + 教職課程
専門性教育学、教科教育学各学部の専門分野を深く学べる
教員免許取得卒業要件に含まれる(負担小)追加で履修(負担大)
教科の専門知識基本〜中級レベル高度な専門レベル
教員採用試験対策手厚いサポート自主学習が中心
進路の幅教員が中心教員・一般企業どちらも
高校教員志望に適しているか△(可能だが主流ではない)◎(主流ルート)


7. よくある質問

Q1. 教育学部に行かないと教員採用試験で不利ですか?

A. 不利ではありません。 むしろ高校教員の場合、専門教科の深い知識が重視されるため、一般学部出身者の方が有利な面もあります。ただし、教員採用試験対策は自主的に行う必要があります。

Q2. 中学校と高校、両方の免許を取るべきですか?

A. 可能であれば両方取得することをおすすめします。 中学校・高等学校の両方の免許を取得する場合は、中学校または高等学校のいずれかで3週間以上の実習を行えば、両方の免許が取得できます。教員採用試験でも、両方の免許を持っていると選択肢が広がります。

Q3. 教職課程は大変ですか?

A. 正直に言えば、かなり大変です。 一般学部で教職課程を履修する場合、学部の卒業要件に加えて教職課程の単位(60単位程度)を取得する必要があります。4年間で計画的に履修する必要があり、相当な努力が求められます。


8. まとめ:自分に合った道を選ぼう

高校教員を目指す場合、**「どの教科を教えたいか」「教育についてどう学びたいか」**によって、最適な学部は異なります。

教育学部が向いている人

  • 教育理論や教育心理学を体系的に学びたい
  • 中学校教員も視野に入れている
  • 教員採用試験の手厚いサポートを受けたい
  • 教員になることを第一志望としている

一般学部+教職課程が向いている人

  • 特定の教科の専門性を深めたい
  • 高校教員を目指している
  • 教員以外の進路も視野に入れたい
  • 専門分野を活かした授業をしたい

重要なのは、「自分がどんな先生になりたいか」をイメージすることです。

  • 生徒の成長を多面的に支えたい → 教育学部
  • 教科の面白さを深く伝えたい → 一般学部

どちらの道を選んでも、高校教員になることは可能です。自分の関心と適性に合った道を選び、充実した大学生活と教員への道を歩んでください。


参考文献・出典

  1. 文部科学省「令和6年度(令和5年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況」
  2. 文部科学省「教育職員免許法」
  3. Wikipedia「教員養成課程」「教育学部」
  4. 各種教員採用試験情報サイト

高校の先生を目指す皆さんへ

高校教員は、生徒の進路や人生に大きな影響を与える、やりがいのある仕事です。専門教科の知識を深め、教育への情熱を持ち続けることで、生徒たちに学ぶ喜びを伝えることができます。

自分に合った学部で学び、充実した準備期間を過ごし、素晴らしい教員として活躍されることを願っています。


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終わりに

高校生のみなさん、進路調べの宿題で「どんな学部・学科があるのか」と最初から把握している人は、意外と少ないのではないでしょうか。世の中のサイトを見ても、知っている人は情報を調べられますが、知らない人は何を調べればいいのか最初はわからない状態になりがちです。そこで、こうした疑問を少しでも解消できるように、今回、塾のブログで紹介することにしました。みなさんの参考になれば幸いです。


学習塾宗樹舎のHPはこちら👉https://soukisya.com/






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