はじめに
「最近の子は文章を最後まで読まない」「図や絵ばかり見ている」
教育現場や家庭で、こんな声を耳にすることが増えました。
実際、今の中高生の多くは、情報を得る順序や脳の使い方が、スマホ・タブレット世代特有の形に変化しています。
この変化を理解することは、効果的な学習指導のために欠かせません。
1. スマホ世代の情報処理の特徴
(1) 視覚情報ファースト
SNSや動画サイトは、まずサムネイルや画像で興味を引く設計になっています。
文章は補足情報であり、
「絵や動画 → 興味があれば文章」という順序が習慣化されています。
結果として、学習でも図やイラストに先に目がいく傾向が強まっています。
(2) 即時判断の慣れ
TikTokやYouTubeショートなどでは、数秒で「見る/見ない」を判断します。
文章を読んでから考える“遅い処理”は、心理的に面倒に感じやすくなります。
(3) テキストスキップ習慣
ゲームやアプリの説明文を飛ばして進められる経験が、「説明文=読まなくてもいいもの」という感覚を植え付けています。
2. 学習への影響
(1) 条件読み落とし
図や絵だけで解き始めることで、文章中の大事な条件や制約を見逃すミスが増えます。
特に数学や理科の文章題で顕著です。
(2) 読解耐性の低下
長い文章を読みきる集中力が育ちにくくなり、複雑な資料や論理的説明に弱くなります。
(3) 浅い理解で終わるリスク
図から得られる情報は断片的です。文章を通して得られる背景や文脈を飛ばすことで、理解が表面的になります。
3. 指導の方向性
今の中高生には、「図から先に見ない」癖付けが必要です。
そのためには、
-
問題文を先に読み、条件に線を引く習慣をつける
-
図なしで文章を読ませ、自分で描かせる練習
-
「図から先に解くと間違える」体験をあえてさせる
といった方法が有効です。
おわりに
スマホやタブレットは便利ですが、その使い方は学習習慣にも大きく影響します。
文章を読んでから考えるという一見遠回りな方法こそが、正確な理解力と論理的思考力を育てます。
これからの学習指導では、テクニックや解法だけでなく、「情報処理の順序」そのものを意識した指導が求められています。
0 件のコメント:
コメントを投稿