2025年11月10日月曜日

💰 アクチュアリー — 数学で"未来のリスク"を見通す専門家 【宗樹舎職業紹介シリーズ #22】

 💼 職業の概要

アクチュアリーとは、数学・統計学・確率論を使って「将来のリスク」を予測し、保険会社や金融機関の経営判断を支える専門家です。生命保険の保険料がどのように決まるか、年金制度が将来も維持できるか、金融商品のリスクはどの程度かなど、一般の人には見えない"未来の数字"を扱います。

高度な数理スキルが求められ、日本アクチュアリー会の正会員数は、2025年3月時点で約2,220名と国内でも数が少ない貴重な職業です。

📋 仕事内容

アクチュアリーの主な業務は以下の通りです。

保険業務

  • 保険料・保険金の計算とリスク評価
  • 生命保険・損害保険商品の設計
  • 責任準備金の算定

年金業務

  • 年金制度の将来予測と財政計算
  • 退職給付債務の計算
  • 年金数理人としてのアドバイザー業務

金融業務

  • 金融商品のリスク分析(市場リスク・信用リスクなど)
  • 資産運用方法の提案
  • ERM(統合的リスク管理)

経営支援

  • 経営層への数理的アドバイスや報告書作成
  • 経営戦略への関与
  • 法令対応(国際会計基準など)

🌍 働く場所

アクチュアリーの活躍の場:

  • 生命保険会社・損害保険会社(最も多い)
  • 銀行・証券会社などの金融機関
  • 年金基金
  • コンサルティング会社
  • 監査法人
  • 政府系機関(金融庁など)

💰 平均年収

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、アクチュアリーの全国の平均年収は903.2万円です。また、厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、平均年収は約948万円(平均年齢40.7歳)となっています。

会員資格別年収

アクチュアリーには3つの段階が存在し、資格の進捗状況によって年収が大きく異なります:

会員資格年収の目安
研究会員(1科目以上合格)平均600万円〜800万円
準会員(一次試験全科目合格)平均1,000万円程度
正会員(二次試験合格)平均1,200万円

年代・経験別年収

年代・経験年収の目安
若手アクチュアリー(20代)500〜700万円
中堅(30代)800〜1,200万円
ベテラン(40代)1,200〜1,500万円
管理職・専門領域担当1,500〜1,800万円超

勤務先別年収

  • 日系大手保険会社: 勤続20年以上で平均1,500万円 
  • 外資系保険会社: 20代で1,000万円以上、30〜40代で2,000万円超も 
  • コンサルティング会社: 成果によってさらに高収入の可能性
  • 監査法人: 信託銀行に比べると年収は下がる印象 

ポイント:

  • 資格取得の進捗状況に応じて、研究会員、準会員、正会員と分類されるため年収が異なる 
  • 資格取得が昇進・昇給の要件となっているケースもあり、準会員や正会員の場合は、毎月数万円前後の資格手当が月給にプラス 
  • 数理スキルが希少で、金融業界では高く評価されるため年収は安定的に高い傾向

🎓 なるための道のり

アクチュアリーになるには、日本アクチュアリー会の資格試験に合格する必要があります。

1. 大学で数学・統計・経済・保険数理を学ぶ

数学科・経済学部・工学部などから進む人が多いです。

2. 保険会社・金融機関に就職

多くの場合、「アクチュアリー候補」として企業に就職し、働きながら試験勉強を進めます。

3. 日本アクチュアリー会の試験に合格する

試験は段階式で構成されています:

第1次試験(基礎科目):全5科目

  • 数学
  • 生保数理
  • 損保数理
  • 年金数理
  • 会計・経済・投資理論

2024年度の合格率は、数学が29.7%、損保数理はたった17.3%と非常に難関です。

第2次試験(専門科目):いずれか1コース2科目

  • 生保コース(生保1・生保2)
  • 損保コース(損保1・損保2)
  • 年金コース(年金1・年金2)

4. 実務経験を積みながら"正会員"を目指す

  • 第1次試験に1科目でも合格すると「研究会員」
  • 第1次試験全科目合格で「準会員」
  • 第2次試験合格+プロフェッショナリズム研修受講で「正会員」

資格を取得するまでに8年近くかかるといわれる難関資格であり、試験合格が昇格の大きなチャンスにつながるため、試験勉強のモチベーション維持につながる仕組みになっています。

試験は長期間の勉強が必要で、合格まで5〜10年かける人も珍しくありません。

📊 難易度

項目難易度説明
大学受験★★★☆☆数学に強い必要があるため、理数系学部への進学が理想
資格・試験★★★★★日本でも最難関レベルの試験。合格まで長期戦
独立・開業★★☆☆☆ほとんどは企業勤務だが、コンサルとして独立も可能
総合評価★★★★★数学力 + 継続力が必須。やりがいは非常に大きい

💡 必要なスキル・適性

数理能力

  • 高度な数学・統計の理解
  • 確率論・統計学の応用力
  • データ分析の能力

論理的思考力

  • 物事を論理的に整理する力
  • 複雑な問題を分解して解決する力
  • 法令を読み解く力(文系の力も必要)

継続力・忍耐力

  • 長期的にコツコツ学ぶ継続力
  • 難関試験に挑戦し続ける精神力
  • 実務と勉強の両立

コミュニケーション能力

  • 文章力・説明力(会社の経営層にも伝えるため)
  • 非専門家にもわかりやすく説明する力
  • 交渉力

✅ 向いている人・向いていない人

向いている人

  • 数学が好きで、難問にもじっくり取り組める
  • 未来予測・経済の仕組みに興味がある
  • 分析やデータを見るのが好き
  • 静かに淡々と考えることに集中できるタイプ
  • 長期的な目標に向けてコツコツ努力できる

向いていない人

  • 数学や確率が苦手
  • 長期間の試験勉強に耐えられない
  • コツコツ継続するのが嫌い
  • 数字で判断するより感覚を重視するタイプ
  • すぐに成果を求めるタイプ

🌟 将来性

プラス要因

  • 希少性の高さ: 正会員数は約2,220名と少なく、売り手市場
  • 社会的ニーズの拡大: 少子高齢化や社会保障問題、保険商品の高度化
  • 活躍の場の拡大: AIを使ったデータ分析、ERM、企業年金など専門性を生かせる場が増加
  • 代替されにくい: AIが発達しても、最終判断を下すのは人間の「専門的な知識と解釈力」
  • 転職市場が熱い: 準会員・正会員になったタイミングで転職活動を行う人は多く、年齢に左右されることがないためキャリアアップのチャンス 

マイナス要因

  • 資格取得の長期化: 8年近くかかる難関資格
  • 昇給の遅さ: 年次ではなく資格進捗に依存するため、「ずっと頑張ってるのに年収が上がらない」という実感 
  • プレッシャーの大きさ: 金融の高度な専門知識やビジネス全般のスキルが求められ、抱えるプレッシャーも大きい

今後の展望

アクチュアリーは"将来"を数字で予測する専門家のため、金融業界では今も将来も需要が非常に高い職業です。少子高齢化や社会保障問題、保険商品の高度化、AIを使ったデータ分析の拡大など、専門性を生かせる場は増える一方。

AIが発達しても、最終判断を下すのは人間の「専門的な知識と解釈力」のため、代替されにくい仕事です。

📌 まとめ(ショート版)

項目内容
職業名アクチュアリー(保険数理士)
仕事内容数学と統計で「未来のリスク」を分析する専門職
平均年収約900〜950万円(資格進捗により600〜1,200万円以上)
(研究会員:約600〜800万円、準会員:約1,000万円、正会員:約1,200万円)
進路理系大学 → 保険会社・金融機関就職 → アクチュアリー試験 → 実務経験
資格取得期間平均8年(5〜10年)
正会員数約2,220名(2025年3月時点)
難易度(総合)★★★★★(5/5)
向いている人数学が好きで、難問にじっくり取り組める人。長期的にコツコツ努力できる人
将来性高需要で希少性が高く、AI時代でも代替されにくい。売り手市場で転職にも有利


📚 参考文献・データ出典

本記事は以下の信頼できる情報源を参考に作成しました:

年収・給与に関するデータ

  1. アガルート「アクチュアリーの年収相場について解説」
  2. マイナビニュース「アクチュアリーの年収は?」
  3. グッドスクール「アクチュアリーの年収は?」
  4. キャリアガーデン「アクチュアリーの年収・給料」
  5. 就活攻略論「アクチュアリーの平均年収は?」
  6. シンシアード「アクチュアリーの平均年収」

💡 情報の信頼性について

本記事に記載されているデータは、2024年〜2025年時点の最新情報に基づいています。ただし、年収は企業・資格進捗・経験年数によって大きく変動する可能性があります。

より詳細な情報については、以下をご確認ください:

  • 日本アクチュアリー会公式サイト
  • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
  • 各保険会社・金融機関の採用ページ

記事作成日: 2025年11月9日
最終更新日: 2025年11月9日
データ基準日: 2024年〜2025年



学習塾宗樹舎のHPはこちら👉https://soukisya.com/








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